カーテンの隙間から朝陽が差し込み、若の髪がきらきらと金色に光った。
昨晩、というより、もう明け方に近く、何時に寝付いたのかも覚えていないが、
毎日かけている携帯のアラームを解除しておくのを忘れたので、
いつもの時間、7時に、ピピピー!ピピピー! と音が鳴り、慌てて消した。
若が、起きなくてよかった。
もう少し寝かせてあげたい。
お昼までに戻れば大丈夫だろう。
午後の商談の資料は、もう出来ている。
午前中に、若に最終チェックをしてもらうつもりだったから、オンラインフォルダに入れておいてよかった。
長谷川に、先に誤字脱字がないか見てもらおう。
「社長は体調が悪いから、出社は、お昼頃になります。
今日の日付のフォルダに資料が入っているので、チェックをして、商談の準備を宜しくお願いします」
と、メールを送ったら、
「なんで、あんたまで来ないんだよ!明日のお昼は、奢りだよ」
と、返信が来た。
鋭い長谷川には、すべてお見通しだ。
まぁ、ランチくらいで済めば、安いもんだろう。
携帯を置いて、そっと、若の顔を見ると、まだ寝息をすうすうと立てて、寝ている。
若の寝顔はあどけなく、本当に子どものようだと思う。
思わず、頬が緩む。
触れたいと思うけど、若を起こしたくない。
伸ばした指先を引っ込めた。
あいつが見ることの出来ない若の寝顔を、
今、俺が見ることが出来るという事実に、堪らなく優越感に浸る。
ここの冷蔵庫は、酒類しか入っていないから、朝御飯に食べれるようなものは、何もない。
少し、買い物にでも、行って来ようか。
ベッドから出ようと、掛け布団を捲ると、
うわっ!
二人とも何も身に着けていなかった。
顔がかぁ〜っと赤くなる。
「ん・・・」
と、若が身じろぎ、寝返りを打って、こちら側を向いた。
(わわわ・・・!!!若! ちょっ・・・それは、ヤバイでしょ・・・)
ダメだ、朝っぱらから、艶かしい若のお姿を拝見したら・・・
普通に反応するだろ!
いや、これ、朝の生理現象ですから!
と、一人、ツッコミを入れながら、
シャワーを浴びに行こうと、
若を起こさないように、
そっと、そぉっと、ベッドから降りた。
「どこ行くんだ、コラ!」
「若!すみません、起こしてしまって。
俺、朝飯、なんか買って来ますから」
「いいよ、まだ、食いたくないし。
帰る途中でどっかで食えばいいじゃん」
「じゃぁ、もう少しお休みになっててください」
「もぅ、目が覚めちまったから、いい。
シャワー浴びる」
もちろん、若が寝た後に、体は綺麗に拭いておいたが、やはり、拭くだけでなくシャワーを浴びたいのだろう。
若は体を起こし、んん〜っと大きなのびをして、足を床に下ろした。
そして、・・・
若の視線が、真っ直ぐに俺の下半身に突き刺さった。
「あんだけ、ヤッといて、どんだけ元気なんだ、おまえは」
俺は、慌てて隠そうとしたのだが・・・
その・・・
もうすでに、掌では隠し切れないほどになっていた。
恥ずかしい・・・
足元に投げ捨てられていたバスローブを身に着けようとしたら、
若が、くくくと笑った。
「あぁ、もういいから、おまえも来い。
一緒に浴びようぜ。風呂場で抜いてやるからよ」
若が、人差し指で、俺のものをぴこんと弾いた。
「わ、若・・・」
「だから、練だって言ってるだろ、おまえ本当に頭悪いな。
何度も同じこと言わすなよ」
蹴りが一発、入る。
「はい、れ・・・練」
若は俺に抱かれる時に、「若」と呼ばれるのを嫌がるのだ。
一人の男として、抱かれたいというの気持ちは、十分理解できるのだが、
でも、いまだに、「練」と呼ぶ時は、ものすごく緊張してしまう。
若が、いや、練が・・・
ゆっくりと立ち上がり、俺の前に両手を掲げた。
「抱っこ」
「へ?」
「歩くの面倒くせぇ」
「はっ!?」
「だから、風呂場まで、抱っこしてくれって言ってんだよ!おら、早くしろ!」
「すみません」
俺は、練をお姫様抱っこした。
練の腕が、肩に回された。
俺の目は自然に、練のあそこに釘付けになる・・・
え・・・!?
練は恥ずかしそうに、俺の胸に薄桃色の頬を摺り寄せた。
「おまえのせい。おまえがそんなになってるからだ。
責任取りやがれ」
俺の腕に抱かれた天使が微笑んだ。
もう、何にも考えられなくなった。