捨て仔犬 2  



「あぁっ…そこ…んん…耳…ね…」

練が、耳朶を噛んでと強請る。
柔らかい耳朶を甘噛みしてやると、練は身体をぴくんと跳ね上げ、それから満足げに笑った。

「そぉ…今度は…もちょっと下…首の…ね…」

首筋にちゅっと吸い付き、歯をたててやる。

「はぁっ…くくぅ…い…いっ…」

スイカ…だよな。やっぱり。
本当に、なんでこいつの身体はこんなに甘い匂いがするんだろう。

「たむらぁ…ほんと…すんげぇ…気持ち…いいよぉ…」

今度は、鎖骨に噛み付いてやった。
あそこにいた時は、もやしのようにガリガリの痩せっぽちだったのに、
何かで鍛えたのだろうか。
今では綺麗な筋肉が付いていて、美しさにさらに磨きがかかっていた。

「ねぇ…もっと…下っ…」

俺は身体を少し下げ、練のリクエスト通り、小さな胸の尖りに噛み付いた。

「ああぁ…やぁっ…そこっ…いい…もっとぉ…」

練の甘い喘ぎに、俺の身体はぞくりと粟立つ。
こいつ、こんな声で啼くのかよ。
そういえば、俺は練の喘ぎ声なんて、まともに聞いたことなかったんだよな。
ここは練の部屋なんだ。
誰にも遠慮することはないから、本当にいい声出しやがる。

ぷくりと立ち上がった可愛い突起にもう一度、歯をたててやる。
左の方は指でつまみ、はじき、こねくり回す。

「うふっ…もっ…たまんねえよ…たむらぁ…」

潤んだ瞳で練が俺を見上げる。
俺は練の甘い喘ぎをもっと聞きたくなって、夢中になって練の身体中にむしゃぶりついた。

真っ白い肌に蝶が妖艶に揺れ動いていた。
韮崎さんに入れられたのだろうか。

何だか、言葉にならない感情が突然腹の底から湧き出てきて、
俺は、その蝶の羽の辺りに強く吸い付き、紅い痕をつけてやった。

「逃げようとした罰…」

練が遠くを見て、ぽつりと囁いた。
その言葉で、自分の推測が当たっていたのだとわかった。

「でも、もう逃げないよ…俺…」
「いろいろあったんだな…おまえも」

俺は、練の頭を撫でてやった。

「ん、今は…大好きだから…
それに、すごく優しくしてくれるし…」
「そっか、なら、よかった」
「それに、田村にも、またこうして抱いてもらえるしね〜」
「え? 俺なんかが…ほんとにいいのかよ?」
「ん!いいの!いいの!」
「なんだか、よくわかんねぇけど、おまえらの関係」
「いいよ、わかんなくて。オレにも、わかんないし。
田村は、オレが抱いて欲しい時に抱いてくれたら…
それでいいからさ、ねっ!」
「はいはい」

「ね、あそこ…噛んでよぉ…」
「今度は、どこだよ?」
「ふふっ…あ〜そ〜こだよ」
「ちゃんと言わねえと、わかんないぜ、俺アホだからよう」
「もう〜田村のいじわるぅ…わかってるくせにぃ」

もう身体中噛んでやったが、まだ触れていないところ。
そこだけ、わざと残しておいたのだ。

練が、ぷいっと頬を膨らませた。
耳朶が朱く色づいている。
まったく、何て顔してんだよ。

「ほら、言ってみな」
「焦らさないでよぉ」

俺はゆっくりと身体を下げつつ、練の顔から目が離せなかった。

「うううう、わん、わん」

練はちょっと腰を浮かして、そこをぷるんと振って、強請った。

ヤベェ。
可愛い…
そして、綺麗だ…

ホントになんで、こいつはこんなに綺麗なんだろう。
そういえば、明るいところで、勃ったの見たことなかったんだもんな。
俺は、そそり立つ練をまじまじと見つめた。
今までに、そりゃあもう数え切れない程の野郎を見てきたが、
何てったって、練が一番だと思う。
色も形も大きさも完璧だ。
男が見ても、惚れ惚れするほどだ。

舌で先端をちょこんと突いてから、優しく、優しく、歯を立ててやると、
練は、俺の口の中でぴくんと跳ねた。

「くくぅ…んんんん…はぁっ…い…いっ…」

可愛い仔犬の啼き声をもっともっと聞きたくなる。
俺は夢中になって、舌を動かす。
今、この一瞬だけは、練は俺のものだ。
そう思うと俺の中で、何かがプツンと切れた。

あそこを出てから、俺にも言えない辛いこともあったのだろう。
でも、自分の力で、這い上がってきたんだよな。
だから今は、俺の口の中で気持ちよくイカせてやりたい。
それだけを思っていたのに。

「たむらぁ…あぁ…もう…ダメ…イッちゃうかも…」
「いいぜ、イケよ」
「ダメだよ、田村と一緒にイキたいし〜」
今度はオレが噛んであげるの、わん」

くぅ〜可愛いすぎるだろ。練。
それ、反則技。

それから、練はきゃんきゃん言いながら、今度は俺の身体中を噛んでくれた。

「痛っ!おまえ、わざとだろ?今の」
「え〜、うっそ〜こんなに優しく噛んであげてるのに?」

そう言いながら、また、歯を立てる。

「こら!痛てえよ!マジで」
「んじゃ、今度は舐め舐めね」

練はまるで犬っころがミルクでも飲むように、ぴちゃぴちゃとわざとらしく音を立てながら、俺の身体中を舐めまわした。

ばかみたいな遊びが、
可笑しくって、
くすぐったくて、
気持ちよくって。

ああああ、ヤバイ!ヤバイ!
思わずイキそうになってしまったじゃねえかよ!
たぶん、練は、俺をここでイカせようとしている。
ケラケラと笑いながら、悪戯する子どものような目で俺を見つめ、べ〜ッと舌を出した。
ったく、こんなところで先にイッたら、何言われるかわかりゃしないぜ。

俺はぎりぎりのところで、ぐっと堪えた。

さぁ、わんこごっこもそろそろ仕上げだ。

俺は悪戯仔犬の細い細い脚をゆっくりと広げ、俺を待ってひくつくそこに、
舌を挿し入れ、
指を挿し入れ、
柔らかく解してやる。

「たむらぁ…もう、いいよ…早くぅ…きてよぉ…」
「ん…」


俺は、ゆっくりと、練の中に己を埋めた。

懐かしい、
柔らかな練にすっぽりと包まれた。


「くくぅ…う…うぅ…あぁぁ…たむらだぁ…
やっと…田村のとこに…戻ってこれたんだね…オレ」

きゅっと締め付けられて、頭の天辺からつま先まで、ぴりりと電流が走ったみたいに痺れた。

「練…キツッ…」

もう、何が何だかわけわかんねぇ。
気持ちよすぎて、頭おかしくなりそうだぜ。
俺は、夢中になって、犬っころのように激しく腰を打ちつけた。

「くっ…あっ…はあっ…たむらぁぁぁぁ…」
「あぁ…練…」

二人の呼吸が重なり合って、
二人のリズムが重なり合って、
二人で目指す絶頂に向かって、
只、腰を振り合う。

「はぁっ…はぁっ…ああっ…た…む…らぁ…」
「はぁっ…はぁっ…ああっ…れ…ん…」

「も、イコッ…」
「ん…イクッ…」


練の熱が腹の間を勢いよく濡らしたのと同時に、
俺も、思いっきり練の中にぶちまけた。



はぁはぁと肩で息をしている練の柔らかい髪に手を入れて、くしゃくしゃと撫でてやる。
穏やかな練の笑顔を見ていたら、何だか、きゅんと胸が痛くなった。
あそこの中ではこんな風に笑うことはなかったからな。

「あ〜田村とするのって、やっぱ気持ちいい!ね、またしようね!」
「生きていたらな」
「まったく、心配症だねぇ、ハゲるよ」

練は笑いながらそっと俺から抜け出して、俺の腹の上に跨った。
そして今度は、俺の前髪をわしゃわしゃとかき上げて、額の生え際辺りをじっと見ている。

「まだまだ、大丈夫そうじゃん」
「ば〜か」

練が、俺のおでこにデコピンした。

「痛え」
「さんきゅ、田村」

突然、
俺のおでこに、ぽつりと、何か冷たいものが落っこちてきた。

練は、それを隠すように、すぐ俺の髪に顔を埋めた。


これが、俺と練との「繋がり」なら、
わんこごっこでも、いい、
練とじゃれ合っていたい、
練の笑顔を見ていたい、
と、只、それだけを願う。

たぶん、
俺は命がけで練を抱く。
これからも、ずっと。


                                

    2009.6.24

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