「あんたさ、ばっかじゃないの?
呆れて、返す言葉もねえよ」
長い間探していた玲子の居場所がやっと判明し会いに行くと、麻生は練に告げた。
「謝りに行くだけだ。俺が玲子の人生を狂わせてしまったんだからな」
「だからさ、前にも言ったけど、今更謝ってもらったてさ、時が戻るわけじゃないし。
それに、もう、あの人だって、新しい人生を幸せに生きてるかもよ?
自分の中では終わったことなんだよ。
やっと忘れることができたのに、思い出したもくないことをさ、思い出さされるって、結構キツイと思うよ」
「俺が悪かったんだ、何もかも。
自分の犯した罪にしっかり頭を下げて謝らなければ、気がすまない」
「だから、そういうところが、あんた、自己中なんだよ。
自分が楽になることしか、考えてねえじゃん」
「楽になりたいとは思ってない」
「ま、いいけどね。あんたの鈍感にはもう慣れたし。
オレが止めたって、どうせ行くんだろうし。
行ってもいいけどさ、帰って来なかったら、許さないからね」
「ああ、心配するな」
練は煙草の煙をふぅっと吐き出した。
「それから、オレのことは言うなよ。
おまえを嵌めた奴と幸せにやっている、なんて、洒落になんねえからな」
「聞かれたら、正直に話すよ」
「止めとけ、ったく、ひでえおっさんだな」
「嘘はつきたくない」
練は麻生の隣に座り、麻生の肩に手を乗せ、耳元に顔を寄せた。
「じゃ、行く前に一発ヤッテおこうな。
万が一、あっちに戻っていかれるのは嫌だから、オレがいなくちゃ生きていけないって身体にしてやるぜ」
「自信家のおまえがそんな風に思うなんてな」
「別に、本当は思ってなんかないよ。ただ、今すぐ、あんたとヤリたいだけ」
「それだけか」
「そ、それだけ」
二人で顔を見合わせて、吹き出した。
「おまえのところに必ず戻ってくる」
「ん、ちゃっちゃと済ませて、早く帰って来いよ」
練は麻生の鼻を人差し指でつんと弾いた。