誠一の書斎のドアをノックして、
「誠一〜できたよ!」と、声をかけた。
椅子から、立ち上がる音がした。
ん、ちゃんと起きているみたいだ。
オレはすぐに走って戻って、キッチンに隠れた。
誠一は、リビングのテーブルに向かい、ゆっくりと椅子に座った。
誠一の方からは、丁度背中側にキッチンがあるから、まだオレの姿は見えていない。
「今、シャンパン持って行くからね〜」と言って、
そっと、キッチンから出た。
トレイにシャンパンとグラスを載せて持ち、
誠一の前に立った。
「ほぉ〜いい眺めじゃないか」
誠一が、にっこりと微笑んでくれた。
シャンパンとグラスをテーブルの上に置いて、オレはくるっと一回りして見せた。
「どう?オレからのプレゼント!
バースデー・スペシャルサービスだよ〜」
「そんな姿を目の前にして、飯を食えというのか?」
「うん、美味しい料理がさらに美味しくなると思うけど?」
「こりゃ、美味くなるより、拷問に近いぞ、この野郎」
シャンパンで乾杯して、
蝋燭に火を点けて、
オレがハッピィバースデーの歌を歌って、
誠一が、ふぅっと火を消した。
オレは、ドキドキしながら、ブイヤベースを小皿に取り分けた。
誠一が神妙な顔をして、食べてくれた。
「どう・・・?」
「ん、美味い」
「本当?ちょっと、薄くないか、心配だったんだけど」
「ああ、確かに、皐月の味とはちょっと違うけどな。
でも今日の俺には、このくらいで丁度いいよ」
「あ〜よかった。ほっとした」
「おまえらしくていい、この味付け」
それから、誠一は他の料理も、少しずつ食べてくれて、どれも美味いといっぱい誉めてくれた。
「やっぱり、そのエプロン姿が、効いているのかもな。最高のスパイスだ」
と、言って笑ってくれた。
食後はソファーに移動して、ゆっくりと酒を飲んだ。
オレの話を笑って聞いている誠一は、とても上機嫌だった。
オレも誠一が料理もこのプレゼントも喜んでくれて、本当に嬉しくなった。
「おまえが、こんなことしてくれるなんてな」
「たまには、いいでしょ?」
「ここに座れ」
誠一が膝の上をここだという様に、ぽんぽんと叩いた。
誠一の膝の上に跨ると、ぎゅっと抱きしめられた。
「寒くないか?」
「大丈夫、誠一の腕の中は暖かいよ」
「可愛い奴だ」
誠一が、優しくキスをしてくれた。
額に、
頬に、
耳朶に、
そして、唇に。
蕩けそうなキスを。
何度も、何度も。
「今までの人生の中で今日が最高の誕生日になったな」
そして・・・
誠一がゆっくりと背中に手を回し、エプロンの紐を解いた。
「もう限界だ、これ以上は我慢できねえ」
「ん、誠一、オレも」
「頑張ったご褒美をやんないとな」
「いいんだよ、今日は誠一の誕生日なんだから。
オレが、誠一をいっぱいいっぱ〜い気持ちよくしてあげ〜んの!」
誠一のシャツのボタンを外していく。
互いの熱が、どんどん高まっていくのがわかる。
「誠一、お誕生日おめでとう」
「ありがとうな」
誠一とオレ、
二人だけの世界で、
誕生日を祝う。
この一年が、
誠一にとって、幸せな一年になりますように。
そして、
来年の誕生日も、
再来年の誕生日も、
ずっと、ずぅ〜っと、誠一と二人で過ごせますように。
オレは、心からそう祈った。
HAPPY BIRTHDAY TO SEIICHI!