「なぁ、おまえ、欲しいもの、なんかあるか?」
練はデスクの上のカレンダーをちらりと横目で見ながら、ふぅっと小さな息を吐いた。
「別にないけど」
「たまには可愛いらしく強請ってみせろよ。おまえの欲しいもの、何だって買ってやる」
「今更、可愛い子ぶる必要なんてないじゃん」
練はデスクの前の椅子を降り、ソファに座っているの誠一の隣に移動した。
「ガキじゃあるまいし」
「ここんとこ、しょうもねえ位くだらないことがぐだぐだとあってよ。イラついてんだ。
そんな時におまえの仏頂面見せられたら堪ったもんじゃねえんだよ」
「酷えな。いつオレがそんなシケタ面してるってぇの」
練は誠一の膝の上に跨がり、首に腕を絡めた。
そして、拗ねるような顔つきで誠一の唇にそっと触れた。
「おまえの笑った顔が見たいだけなんだよ。ただそれだけのことだ」
「もう、そんなのだったらいくらでも見せてあげるって」
「俺がしたことで笑わなくちゃ意味がない」
「何その俺様的理論は」
誠一は練の柔らかな髪を梳き、唇を啄む。
確かに自分で言ってておかしいと思う。
練の前だけなのだ。こんな有り得ない自分をさらけ出してしまうのは。
「ん〜金で買えるようなつまんないものはいらねぇからな」
練もチュッチュッと短いキスを返しながら、真剣に考え始めた。
誠一は金が必要な時に用意してくれと言うだけで、それ以上、組の話は一切練にはしない。
練も何があったのか知ろうとはしないが、誠一がこんな顔をするのだから余程の事があったのだろうと思う。
「じゃあねぇ…」
そう言いながら、段々と舌が絡み合いキスが深まっていく。
「んふっ…そうだなあ…」
誠一が練のシャツのボタンを一つずつ外し、練の肌に手を滑らせた。
「ん…も…折角今、考えてるとこなのにぃ…」
「おまえが跨がったりするからだろ」
シャツが肩からするりと落とされ、練の白い肌が露になる。
誠一は胸にとまっている蝶を優しく撫でながら、声に出さずに呟いた。
(ったく、こいつの魔法はなんでこんなに……)
「ここじゃ嫌…ちゃんとベッドでしてよ」
誠一は頷き、練をひょいと抱き上げベッドルームに運んだ。
互いに服を脱がし合って、
指と足を絡め合って、
甘い吐息を絡め合わせた。
「誠一、欲しいものあったよ…」
練が誠一の耳元で囁いた。
「ん、なんだ?」
「24時間」
「24時間…?」
「誠一の24時間、オレに頂戴」
「一日中、おまえの言う通りにしろっていうのか?」
「何しててもいいけど、20日は24時間、ずっとオレに密着してること!しょんべんと飯以外な」
「俺がおまえに張り付くのか?」
「そ、これって結構難しいんじゃない?」
「張り付いて何するんだ?」
「そんなの決まってるじゃん。オレと誠一がすることって他にあるのかよ」
「24時間…」
「ヤリまくる!一滴も残らずね」
「それがおまえの望みか?」
「うん、今まで誰にもあげたことないでしょ?」
「当たり前だ」
「なら嬉しいよ。オレだけのために、誠一の24時間くれたら」
誠一は長い溜息をついて、練の額をこつんと人差し指で突いた。
「覚悟しろよ」
「本当にくれるの?」
「一滴残らずおまえにくれてやる。一銭もかからないんだ。お安いもんだ」
「楽しみにしてる」
「あぁ、俺もだ。もういいって音を上げるなよ」
「ん!望むところ。最後の一滴まで搾り取ってあげるからね!」
「今までそんな“モノ”欲しがった奴はいねえな。
ったく、どこまで、イカレてんだか……呆れるぜ」
「でも、オレにとっては、最高の誕生日ブレゼントだよ」
二人で見つめ合って、笑い合った。
Happy Birthday To Ren!