真っ暗な道を歩いていた。
凍てつく空の低いところに明るい月が見えた。
もうすぐ夜明けだ。
ったく、今日はついてねえ・・・
エンジンの調子が悪くて、運転途中で車を降りた。
ここなら馴染みの整備工場のすぐ近くだ。
上川に任せ、引き取りにきてもらうことにした。
なんでこんな寒い中歩かなくっちゃならないんだ。
こんな時に限って一台のタクシーも通らないなんてな。
線路沿いの細い道をまっすぐ進み、次の角を曲がればもうすぐ皐月のマンションだ。
その時、
ふと前を見ると少し先の線路の上に何かが見えた。
なぜかそこだけが、月明かりに照らされて俺の視界に浮かび上がって見えた。
気になって足早に近づいて行く。
電車はここを通るんじゃねえのか?
腕時計を見るものの電車なんて最近乗ったことないから、こんな時間に動いているのか全くわからなかった。
「何だ、あれ?」