紅縄 1989.4  2   




Side Ren


「くそっ、なんて顔しやがってるんだ。胸糞悪い野郎だ」

皐月さんの部屋から無理矢理連れて来られた。
ここは、あの男の部屋なのか?
何が何だか訳がわからないまま、いきなり殴られた。
すごい力だ。頭が朦朧としてきた。

「お前は皐月の部屋でいったい何をしてたんだ、え? 言ってみろ」

(あんたが勝手に拾って、置いていったくせに)
と、声に出さずに、心の中で呟く。
言いたくても、言えるはずがない。
もっと痛い思いをすることは、この男の拳の強さでわかる。
ここは、我慢するしかない。

獣のような鋭い目付きで睨まれる。
この目・・・
たぶん・・・
きっとそうだ。
この男もこっちの人間なのだろう。

この先の行為を思うと、絶望的になる。
これが嫌であの線路に寝たのにな。
オレは、また、戻って来てしまったのだろうか。
あの暗い暗い夜の底に・・・

「黙ってないで、なんか言ったらどうだ? あぁん?」

それから、何度も何度も蹴られた。
男の足が頬にぐいとくい込んで痛い。

乱暴に服を剥ぎ取られた。

もう抵抗する力も残っていない。
諦めるしかない。

好きなようにしてくれ。
そして、またあの線路に捨ててくれよ。
なぁ、頼むから。

熱くて硬いものが、身体の中にみしみしと入ってくる。

もう、どうでもよくなった。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


Side Seiichi


何てツラしてるんだこいつ。


皐月のマンションで何が起こったのか、自分でもわからなかった。
気がついたら、こいつを車に押し込んで、俺の部屋に戻っていた。

くそっ。
むかっ腹が立つ野郎だ。

殴って、蹴っても、何も言わない。
何の抵抗もしない。
俺を睨んでいるわけでもなく、どこを見ているのか焦点の合わない目。

「黙ってないで、なんか言ったらどうだ? あぁん?」

踏みつぶしていた足の裏から、何だかむらむらとくる。
気がついたら、服をむしり取っていた。


な・・・
何だ・・・?
これは・・・?

甘ったるい匂いが妙に鼻につく。
皐月の香水ではない。

おい・・・
もしかして、こいつからなのか・・・?
そういえば、前に背負った時もこんな匂いがしたような気がする。



慣らすこともしないで、ぶちこんでやった。

「ちっ」

何なんだ・・・
こいつの中は・・・

くそっ
きつっ
わけわかんねぇ・・・

もやしみたいな身体してるくせに、
俺に食らいついてくるとは、
いい度胸してんな。

「う・・・」

こんな奴に・・・

この俺が・・・?

悔しくて、
無性に腹が立つのに、
身体が離れられない。

もっと殴りたいのに、
もっと蹴りたいのに、
もっと奥までぶち込みたい。

今までに味わったことのない、
不思議な感覚。
身体が痺れて、
頭が真っ白になっていく。

壊してやりたい。
畜生。

                                

    2012.2.14

inserted by FC2 system