紅縄 1989.4  4   





ったく、気持ちよさそうに、寝ていやがる。
この分じゃ当分起きそうにもない。

昨日は少しヤリ過ぎたなと、自分でも可笑しくなる。

そういや、コイツの歳も聞いてなかったな。
多分、20代半ば位だろうが、こんなあどけない寝顔を見ていると、もっと若くも見える。
カジュアルな格好をしていれば、大学生でも通るんじゃないか。


昨日の晩からずっと離れられなかったベッドから、
ま、ベッドと言うより離れられなかったコイツの身体から、
やっとのことで、抜け出る。
これ以上、ここにいたら、また襲いそうでヤバイ。


腹が減ってきたから、
朝飯でも作ってやろうか。


皐月の部屋から、無理矢理引っ張って来たから、
服も下着も何も持って来なかった。
皐月のことだから、後で送ってくるかもしれないが、
取り敢えず、買い物にでも連れて行くか。


手帳を取り出し、今日の予定を確認する。

夕方から、接待が1件か。
事前の打ち合わせに、組に顔を出さなくてはならないが、
3時頃までは時間がある。

一日のスケジュールが決まったら、
身体がすうっと動き出した。

ちゃっちゃと手早く、
フットワークも軽く、
無駄のない作業。

信じられない。

この俺が?

誰のために?

一体何をしているんだ?

答えはわかっているから、
これ以上、自分に問うことはしない。

感情よりも先に身体が動いた。
コイツの寝顔がそうさせたのだから。

只、それだけのことだ。


練・・・


今日から、名前で呼んでやろう。

                                

    2013.2.15

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